読売新聞社の科学欄に市民科学の解説と小学生を中心とした優れた事例が紹介されました(2022年9月)

読売新聞の科学欄「みんなのカガク」で市民科学の優れた事例として「巻き貝研究 児童が貢献」のタイトルで詳しい内容が紹介されると共に、市民科学についての解説、優れた市民科学を実践するための代表理事の小堀のコメントが掲載されました。
(2022年9月29日付、船越翔記者)

この事例は、青森県むつ市立川内小学校の歴代の5年生が、地域の自然を学ぶ授業の一環として、干潟に生息する準絶滅危惧種の巻貝ウミニナの生態を分布の北限である陸奥湾で、2014年から2019年の5年間、継続的に調査した結果が報告されています。

研究計画や調査方法は、国立環境研究所、熊本大学、むつ市海と森ふれあい体験館の研究者が連携し、小学校も指導の支援をしました。その結果、陸奥湾の人工干潟に生息するウミニナは他の南の地域と比較して成長や成熟は遅いが、大型化することがわかりました。特に、小学生は2年間にわたり印をつけた1,209個体を再捕獲し、その成長を測定工具や顕微鏡下で観察することによって、夏場の温度が年間成長量を決定していること明らかいにしました。この結果は、今後、温暖化がさらに進行すると、干潟生物の生活史特性を変化させ、その影響が陸奥湾のような分布域北限付近でより大きくなる可能性を示しました(Kanaya, et.al,2022)。小学生たちはこれらの結果を数回にわたり、学会で発表し、また、研究結果は研究者がまとめ2020年8月に日本生態学会の英文誌で発表されました。

https://doi.org/10.1111/1440-1703.12347

また、代表理事の小堀は、記事の中で市民科学においてはこの事例のように、市民科学のデータを活用する研究者や企画者が研究計画をきちんと設計し、息の長い活動につなげていくことの重要性を指摘しました。