新年のご挨拶

寅年の新年を健やかに迎えられたことと思います。

昨年はコロナ禍で従来の当たり前が通用しなくなり、多くの活動は制限されました。しかし、それと同時に新たな発想やアプローチが生まれた年でもありました。コロナは、各国に世界共通の社会課題の対応を迫り、また、一人ひとりがコロナにより生じた課題を自ら解決する方策を考える状況が生まれたためです。

今年はどんな年になるか、予測はできませんが、時代の転換期の年となるでしょう。従来の個別の問題の解決策ではなく、問題群の同時解決を可能にするSDGsの考えもそのための方策となるでしょう。また、withコロナあるいは次なる感染症への備えとしての野生生物、人、生態系の3つの健全性や健康を一つとして捉えるワンヘルスの考え方も重要となるでしょう。

生物多様性保全の分野でも今年はビッグ・イヤーを迎えます。4月から5月にかけて、第15回の生物多様条約国会議(第2部)が中国の昆明で開催され、愛知目標の次なる新たな目標が採択され、その後、日本の生物多様性国家戦略が策定される予定です。新たな目標では、生物多様性の目標も生物や生態系の枠を超えて、経済、社会へと広がっており、本会のミッションである、生き物、自然、人と社会の新たな関係を結び直すことはさらに重要な課題となってくるでしょう。

市民科学の研究会では、昨年もコロナ禍でも野外で個人による実施可能な生き物調査である iNaturalistを用いたプロジェクトを実施しました。また、オンラインでの「市民科学をSDGsに活かす」のセミナーを開催しました。昨年は、日本でも市民科学の 社会実装の事例が増えていることを実感する年でもありました。科学的なイビデンスに基づいたデータ収集やそのデータを活用することへの社会的な必要性が認識され始めた証でもあると言えます。

市民科学は多様な活動やプロジェクト、根拠に基づいた政策決定(EBDM)など様々な分野へ導入することが可能です。市民科学が社会の多様な人と組織、多様な場面で展開されるよう、皆様とご一緒に活動できることを期待しています。今年も引き続き宜しくお願いいたします。

皆様にとりましても充実した素晴らしい年となりますことを祈念しております。

代表理事
小堀洋美