第24回市民科学研究会 開催報告

2021年11月20日(土)に,第24回市民科学研究会「SDGsを市民科学で活かす」を開催しました.
市民科学研究会は,(一社)生物多様性アカデミー(BDA)の研究会として位置づけられており,市民科学や市民参加型調査に関する情報共有,プロジェクト研究など,市民科学の展開に関するテーマについて自由闊達な討論を行っています.
 
なお当初2020年4月12日に予定していた第24回市民科学研究会は,新型コロナウイルスの感染拡大により対面での実施は延期しておりましたが,今回オンライン(Zoom)を活用しての開催がかないました.
第24回市民科学研究会の開催案内
 
 
研究会では,最初に生物多様性アカデミーの小堀洋美代表理事(東京都市大学特別教授)より開催挨拶とSDGsに向けた市民科学の最新情報の共有があり,続いてSDGsの理論と実践の第一人者である佐藤真久教授(東京都市大学環境学部教授)より講演「これからの市民科学:国連ESDの10年の経験を活かしSDGsの本質に対応する」が行われました.最後に参加者の質疑ならびに小堀代表と佐藤教授によるディスカッションが行われました.
 
小堀代表による最新情報の共有では,生物多様性・市民科学・SDGsの関わりについて共有されました.まず生物多様性をはじめとする生命圏はSDGsの基盤となるものであることを確認したうえで,2021年秋に行われた開催されて間もないCOP15や,2019年に発表された地球規模の生物多様性の評価など,目標や評価の最近の動きを紹介しました.また,市民科学による学習機会やデータの取得がSDGsに貢献していることを論じたうえで,今後SDGsの目標達成のために市民科学を取り入れる動きが加速すると指摘しました.本報告は,生物多様性アカデミーが主として専門としてきた生物多様性や市民科学を,SDGsのフレームワークに位置づけるための重要な議論となりました.
 
 
続いて,佐藤真久教授による講演「これからの市民科学:国連ESDの10年の経験を活かしSDGsの本質に対応する」が行われました.講演では,現代社会が人新世に突入し国際秩序が大きく変化していること,社会・経済の変化ならびに気候変動をはじめとする環境の変化を受けながらSDGsが形成されてきたこと,SDGsが誰も取り残さない世界に変容させていくための目標であることを解説しました.また,現代の問題は個別ではなく統合的に考える必要があるためシステム思考が重要であること,個人・社会の変容のためには協働プロセスを充実させる必要があり,その参加の仕組みづくりが重要であること,そのためには個人が思考と実践を経た探求が望ましいことを指摘しました.以上のようなESDの特徴は市民科学と共通しており,市民科学がSDGsに向けて果たす役割は大きいと考えられる一方,市民科学は現在の姿を描くには長けていながらも,デザイン思考を取り入れたものは数が少ないこと,地域とのつながりを持たない人々の参加が少ないことなどが課題として挙げられました.本講演による学びは大きく,生物多様性アカデミーが目指す市民科学の主流化に向けた課題と手法を再検討するきっかけとなりました.
 
 
オンラインでの開催ながら,40名近くの参加者に参加いただきました.また,佐藤教授は参加者がチャットに感じたことや疑問に思ったことを書き込むことを強く推奨し,さまざまな参加者の考えをたくさん引き出して実りあるディスカッションを行っていました.参加者の皆さんにとって充実した時間になったのではないでしょうか.
 
(文責:岸本)