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2022年05月16日

CNC2022の東京と世界445の参加都市の結果のお知らせ

CNC2022は世界47か国の445都市で4月30日から5月9日の10日間にわたって、同時に開催されました。最初の4日間はスマートフォンを用いて野外で生物を観察・投稿し、残りの6日間は観察された種を同定する作業が行われました。東京大会へご参加くださった皆様、また、4月30日に東京都市大学夢キャンパスで開催しましたイブリッドでの講演と観察会のイベントにご参加くださった皆様には、心からお礼を申し上げます。プロジェクトを楽しんでいただき、生き物との新たな出会い、周囲の環境への新たな気づきがあったことを願っています。

実施本部であるロサンゼルス自然史博物館とカリフォルニア・アカデミーオブサイエンス(California Academy of Science)より、東京の結果を含めた全参加都市の結果が各都市のオーガナイザーに届きましたので、その概要をお知らせします。

Ⅰ. 東京の結果

本部での集計時の東京の観察数は2,374(455都市中の145位)、観察された種数は675(146位)でした.参加者数は79人(175位)でした。いずれの数も昨年より大幅に減少しました。

今年はコロナ禍でも行動制限がなくなり、大型連休中であったことが参加者の減少の背景にあるかと思われます。また、参加者は昨年よりは、里山や大きな公園での観察数が増えていることから、自宅や職場付近よりは都内で遠出する傾向が見られました。さらに、一人当たり平均の観察数は30件で、参加者は多くの時間を観察のために費やしてくださったことが分かります。

 

同定者数は109名となっており、参加者の79名より多くなっていますが、CNCのプラットフォームであるiNaturalistの世界及び日本の登録者が、同定作業に参加くださったためです。なお、4日間の最多の観察者は191種を投稿してくださり、最多の同定者は99種を同定してくださいました。

 

観察された生物については、最も多く観察された生物のトップ5は、シロツメクサ、ハルジオン、アカツメクサ、ビロードクサフジ(広義)、ナガミヒナゲシでした。いずれも日本の在来種ではなく、ハルジオンが帰化植物である以外は外来種であることは注目されます。 同定された種の分類群からみても植物が64%と最も高い割合を占め、次いで昆虫25%、鳥類6%、菌類2%、クモ類1%、両生類0.2%,爬虫類0.3%の順でした。

これらの生物の情報は、以下のCNC2022TokyoのWebサイトに詳細に記載されていますので、ご参照ください。

 

https://www.inaturalist.org/projects/city-nature-challenge-2022-tokyo

また、観察された種数のうち、有効な観察数((欠損値を含まない、ペット・植栽などでないデータ)は、全観察数の90.5%を占めました。また、有効な種数も全種数の89.3%と高い割合でした。これらの結果は、参加者が投稿可能な生物についての知識をもち、配慮して生物を選択してくださった結果と考えられます。

 

全観察数のうち種名が確定され研究用データとなった件数は908件で、全観察数の38.3%(164位)でした。これらの研究用データは、国際的な種の多様性の最大のデーターベースである地球規模生物多様性情報機構(GBIF)への送られ、オープンデータとして研究者をはじめ、だれでも利用できるようになります。

 

Ⅱ.世界の都市の結果

CNC2022年には、世界の47か国の445都市が参加し、2018年に世界の都市が参加しての開催以来、最も多くの都市数となりました。CNCは世界規模のWebを用いた人気の生き物調べの市民科学プロジェクトとなっており、2018年の開始以来、毎年参加都市数が倍増してきました。しかし今年の参加都市数は昨年の419都市と比較して、わずかの増加に留まりました。

今年の全参加都市の合計の生物の観察数は約170万、観察された種数は約5万100種、参加者数は約6万7千200人となり、いずれも過去の値を上回りました。また、2,244の希少種が観察されたことも注目に値します。

また、世界で最も多く観察された種はセイヨウタンポポ(Common Dandelion :Taraxacum officinale)でした。

 

世界の参加都市の中で生物の観察数のトップ 3 は①ラパス(ボリビア):137,345、②ケープタウン(南アフリカ):66,144、③ボストンGreater Boston(USA):46,896の順でした。また最も観察した種数が多かったトップ3は①ラパス(ボリビア):5,320、②ケープタウン(南アフリカ):4,388、③香港SAR(香港):4,355の順でした。観察者数の世界のトップ3は、①ラパス(ボリビア):4,296人、②ワシントンDC首都圏(USA):2,114人、③サンフランシスコBay Area:2,084人でした。これらの比較は多様な比較の方法がある中の限られた方法と考えるのが適当と思われます。例えば都市の線引きも上記の参加人数のトップ2にランクされているワシントンDCでは首都圏のみを対象地域とし、また、トップ3にランクされているサンフランシスコでは、Bay Areaのみを対象地域としているなど、都市の境界(線引き)は参加都市のオーガナイザーに任されており、都市の全域を含まない場合もあります。東京も島嶼は含まれていません。また、比較を面積単位、人口単位とするの大幅に変化することが予想されるためです。

また、有効な観察数のトップ3は①ラパス:106,599、②ケープタウン:58,143、③ダラス/フォートノース(USA)41,682でした。東京132位でした。研究用データとなった種数のトップ3は、①ケープタウン2,325、②ダラス/フォートノース(USA)1,924:③グレーズ(オーストリー)1,880でした。

ちなみに戦火の中でウクライナの人々もCNCに参加されました。リヴィウ市(Lviv)からは19名が参加し、観察数は93でした。さらにそれ以外のウクライナの複数の都市からは合計で240名が参加し、観察数は7,867に上りました。ウクライナの全参加都市の参加者数は世界の445都市の上位70位、観察数は54位となりました。

戦火や大災害による被災地で生きる人々は、バイオフィリア(生命に対する愛)を深く感じ、生きる力をもらうと言われています。CNCが平常時、コロナ禍や戦争などの非常時においても人々への生命、生き物とのつながりを大切に考え機会となることを願っています。

ハイブリットイベントの開催場所となった東京都市大学夢キャンパス

ハイブリット会場での講演の様子

多摩川中流域での観察の様子

2022年04月21日

企業の生物多様性への役割とスマホを用いた会社・自宅周辺の生き物調査を実施しました

経団連自然保護協議会が主催するセミナー「企業の生物多様性への役割とスマホを用いた会社・自宅周辺の生き物調査」において,生物多様性アカデミーがプログラム2「企業の生物多様性への役割とスマホを用いた会社・自宅周辺の生き物調査」を担当し,2021年10月7日に関連企業の社員を対象として開催しました.生物多様性アカデミーからは小堀洋美代表理事および岸本慧大氏(慶應義塾大学),また一般社団法人ヤマネ・いきもの研究所の湊秋作氏(関西学院大学前教授)が登壇し,オンライン講義と自然体験を実施しました.

講義では,小堀代表理事が,1)国内外の生物多様性の現状と課題,2)生物多様性の2050年ビジョンに向けた国内外の動向,3)生物多様性のリスクを削減し,ビジネスチャンスとする企業の対応と役割について解説しました.また,4)自然体験で実施する市民科学プロジェクトの意義や過去の実践事例の紹介も行いました.

自然体験では,iNaturalistを使って,コロナ禍でもひとりひとりが野外で生物観察ができる市民科学プロジェクトを実施しました.これは生き物の知識がなくてもAIのサポートによって気軽に利用できるオンラインでの生き物調べです.参加者の観察した生物の数や種数のランキングが示され,より高い順位を目指して競いながら楽しむことができます.さらに,生き物のデータは参加者と共有でき,国際的な生物多様性のデータベースにも登録されます.ローカルからグローバルに視野を広げながら,生物多様性の科学にも貢献できることを体験していただきました.

本イベントの様子は,経団連自然保護協議会が発行するKNCF NEWSに掲載されています.
ぜひご覧ください.

経団連自然保護協議会. 2022. 企業の次世代環境リーダーの育成に向けたオンライン環境セミナーの実施結果と今後のあり方について. KNCF NEWS, 89. 15-16. https://www.keidanren.net/kncf/wp/wp-content/uploads/KNCFNEWS_89.pdf